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鮮やかな朱に、それを引き立てる金や翠。小さな面に極彩色の世界が広がる「薩摩ボタン」は長く歴史に埋もれていた存在でした。5年前、その美しさに出合い、惹かれるように研究をはじめたのが薩摩焼きの絵付け師である室田志保さん。今回、日本ボタン大賞審査員特別賞に選ばれた室田さんの作品から、伝統の技とそこに込められた創作への思いを読み解きます。
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今年度、初めての試みとしてスタートした日本ボタン大賞の一般公募。多彩なデザイン・アイデアが寄せられたなか、日本ならではの技術を駆使した作品も多く、室田さんの「薩摩ボタン」は審査員から高い評価を集めました。 小さなボタンに極彩色で花鳥風月を焼き付けた「薩摩ボタン」。登場したのは江戸末期といわれ、倒幕の士気高まる幕末の薩摩藩で、軍資金を得るために輸出用として作られたのがはじまりでした。欧米のコレクターから珍重され、外貨獲得の資金源として日本の夜明けの一端を担いましたが、いつしか途絶えつつありました。 そんな薩摩ボタンと室田さんの出合いは5年前。鹿児島の短大で染織を学んだあと、茶器専門の薩摩焼窯元で約10年間、「割物」と呼ばれる茶碗などの絵付けの腕を磨くなかで、雑誌で見た薩摩ボタンのレプリカに惹かれたことがきっかけだったといいます。資料も少ないなかでの技術の研究はまさに手探り。手法から絵具の調合、土台となるボタン形の本焼きの確保まで、苦心を重ねながら現在の制作活動の基盤をつくってきました。 作品はすべて手描きのうえに、窯入れも一つにつき最低でも6回は必要となれば月に30個が限界。それでも伝統の技をいまにつなぎながら「現代に通じる装飾品として高めていきたい」といい、その瞳は幕末の薩摩隼人たちと同じく、世界に向けられています。 |
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